
葉山の別荘。週末しか来ない家のデッキ
葉山の別荘から。現地調査・打ち合わせ・施工の記録
鎌倉職人の栞
三浦さんからメールが届いたのは、5月の平日だった。「デッキが傷んできたようで、一度見てもらえますか」という短い文面だった。葉山の別荘に週末しか来られない施主からの依頼は、年に何件かある。たいてい、放置期間が長い分だけ状態が想像以上のことが多い。現地を踏んでみて、改めてそれを確かめることになった。
葉山の家に、主はいなかった。
平日の火曜日、葉山まで現地調査に来た。
三浦さんからメールで連絡が来たのは、その2週間前のことだった。「ふだんは都内にいて、週末しか来られないんですが、デッキがかなり傷んできたようで。一度見てもらえますか。」という文面だった。電話じゃなくメールだったのは、たぶん忙しい人だったからだと思う。
現地には誰もいなかった。三浦さんは連絡をくれた上で、鍵をポストに入れておいてくれた。そういう依頼は珍しくない。
庭に入ると、正面にウッドデッキが見えた。リビングから張り出した形で、海方向に向いた2間半ほどのデッキだ。葉山らしく、庭の向こうには木の間から海が少し見えた。
デッキは10年近く、ほぼ手つかずだったという。腐朽しているかどうかを確認するために、板の端を押してみた。やわらかくなっている。ビスの周りが黒く変色していた。根太も怪しかった。
「ここまで来ているなら、全部変えた方が良い。」
誰もいない庭で、俺は一人そう判断した。
三浦さんに説明した、2択。
三浦さんとは後日、都内のカフェで打ち合わせをした。週末は家族と過ごしているそうで、平日の昼間に時間を取ってくれた。
「全部剥がして作り直すと、どんな選択肢がありますか。」
俺は2つを提示した。ひとつは価格を抑えた防腐処理木材。もうひとつはウリン。
「デッキを週末に掃除したり、塗ったりするために葉山に来るのは、現実的じゃないんです。」と三浦さんは言った。それを聞いて、俺は迷わなかった。週末しか来られない家で、管理の手間が必要な素材を選ぶのは合っていない。素材ごとの費用と手間を数字で見比べたい方は、ウリンと他木材の30年コスト比較も参考になる。
打ち合わせで三浦さんが聞いた、3つのこと
週末しか来ないので、施工初期のアクが心配です。雨が降るたびに誰かが確認しないといけませんか。
アクは出るが、対策は施工前にやってしまえる。デッキの下に砂利を敷いてアクを逃がすルートを作り、外壁に当たりやすい場所には水切りを入れる。あとは自然に落ち着くのを待つだけだ。誰かが常に見ていなくても問題ない。
施工中に立ち合いたいんですが、週末しか来られません。
施工期間中は毎日写真を撮って送った。途中の状態確認はそれで十分だ。現場を見たいという気持ちは当然だが、そのために毎日遠方から来てもらうより、写真の方が実用的なことも多い。
何年か後に傷んできたらどうしますか。
正しく組んだウリンは、20年30年で傷むということがまずない。ただ、何か気になることがあれば遠慮なく連絡してほしいと伝えた。素材が強くても、施工後に連絡を絶つつもりはない。
施工。人のいない庭で。
施工の日も、三浦さんはいなかった。
既存のデッキを撤去すると、根太がほぼ全滅していた。表面はかろうじて板の形を保っていたが、内部は腐朽していた。あと1〜2年放置していたら床が抜けていたかもしれない。三浦さんはそこまでの状態だとは思っていなかったらしい。
ウリンの角材と床板を組み上げた。葉山の住宅は敷地に余裕があったから、材料の搬入と作業スペースは確保しやすかった。
施工中、近くを散歩する人が何人か足を止めた。赤褐色のウリンが組まれていく様子は、目を引くらしい。「これ何の木ですか」と聞いてくれた人もいた。
3日間で仕上がった。
最初の週末、三浦さんが来た。
完成の翌週末、三浦さんから短いメッセージが届いた。
「想像以上でした。木の色が、ここの庭に合っている気がします。早速コーヒーを淹れて、外で飲みました。」
それだけだったが、十分だった。
週末しか来られない家だからこそ、その週末が良いものでなければいけない。長く、手をかけなくていい素材を選んだ甲斐があったと思う。
鎌倉職人のおさらい
三浦さんのケースで感じたのは、「週末しか来られない」という条件が、素材選びの答えをほぼ決めていたということだ。メンテナンスのために葉山へ行く時間を毎年作るより、最初から手のかからない素材を選んだ方が、その後の数十年が楽になる。ウリンは最初の投資が大きい。でも、週末を自由に使いたい人には、その価値が分かりやすく出る素材だと思っている。

100年後も愛される、
長く使うという贅沢。
私たちの家具が長く使えることを大切にするのは、ウリンという素材が持つ長い時間感覚に裏打ちされているからです。
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