
5年で限界を迎えた杉デッキ。
柿谷さんが選んだ、やり直しのない素材
鎌倉山の現場から。撤去・施工・半年後の記録
鎌倉職人の栞
「杉のデッキって5年ももたないんですか?うちのも最近ひびが入ってきて心配で。」という相談や、「一度作ったら壊すのに費用もかかるって知らなかった。最初からちゃんと選べば良かった。」という後悔の声。鎌倉山の柿谷さんから電話を受けた日のことを、今でもよく覚えている。今回は実際の現場の話をそのまま書く。同じ悩みを抱えているなら、参考にしてほしい。
電話が来たのは、3月の寒い朝だった。
折り返し電話をしてきたのは、鎌倉山に住む柿谷さんだった。声に焦りがあった。「デッキの床板がね、子供が裸足で歩いたら刺さったんですよ。ささくれが。」
俺はすぐに状況が分かった。杉の防腐デッキで5年経過、鎌倉山特有の湿気と影の多い立地。ほぼ想像通りの経緯だった。
翌週の水曜日、現場を見に行った。
門を開けて庭に入ると、リビング窓に面した幅3.6メートル、奥行2.1メートルのウッドデッキが目に入った。5年前に近所のホームセンター系の業者に頼んで作ってもらったという。当時の見積もりは30万円を少し超えるくらいだったと柿谷さんは言っていた。
近づいてみると、床板の表面が明らかに荒れていた。ひびが入り、繊維が起き上がってささくれになっている。端の1枚は角が欠けて浮いていた。踏んでみると、柔らかくなっていた。内部がすでに腐朽し始めている感触だ。
「これ、全部剥がさないといけませんね。」
柿谷さんは「やっぱりそうですか」と言いながら、遠い目をしていた。
撤去作業。5年分の後悔を、剥がす。
撤去の日は4月の上旬だった。
床板を一枚一枚、慎重にはがしていく。外から見るとまだ使えそうに見えた板でも、裏側は黒く変色していた。腐朽菌が内部から食い進んでいたのが分かる。
根太(ねだ)と呼ばれる土台の横木も状態が悪かった。一部はビスを抜こうとしたら、木の方がぼろりと崩れた。ビスの頭だけ残って、木が周りから崩れていく。そういう場面を見るたびに、素材選びの重さを感じる。
撤去にかかった時間は約5時間。廃材の処分費用も込みで8万円ほどになった。
柿谷さんはその請求を聞いて「最初からちゃんとした材で作っていれば良かった」と言った。俺も同感だった。でも後悔させても仕方ない。次を良くすることの方が大事だ。素材ごとの費用感を数字で見たい方は、ウリンと他木材の30年コスト比較も参考にしてほしい。
施工前に柿谷さんが聞いた、3つの疑問
ウリンって本当にメンテナンスしなくて良いんですか?正直、信じられなくて。
塗り直しは要らない。ただ、こまめにほうきで掃いて、汚れが目立ってきたら水で流してやるくらいはしてほしい。素材が強くても、汚れをそのまま積まれたままにするのは良くない。でもそれ以上のことは基本的に要らない。
赤いアクが出ると聞きましたが、周りが汚れてしまいますか?
最初の半年くらいは雨のたびに赤いアクが流れ出る。柿谷さんの場合、デッキの下が砂利敷きだったから、そこに逃がす設計にした。コンクリートや外壁に直接当たる場所には水切りを設けた。事前に対策しておけば、後悔するほどの汚れにはならない。
DIYで安く済ませようとしたら止められましたよね?なぜですか?
ウリンは一般の工具では加工できない。試せば分かるが、鋸刃が一瞬で終わる。下穴なしにビスを打てばネジ頭がねじ切れる。怪我のリスクもある。プロの道具と技術が揃って初めてまともに施工できる材だ。ウリン施工の難易度とプロの道具にも詳しく書いているが、ウリンのDIYは本当に勧めない。
施工初日。鎌倉山に、鉄の木を組む。
材料が届いたのは施工の前日だった。10トントラックに積まれたウリンの角材と床板。荷台から降ろすとき、ドライバーが「重いですね」と言っていた。当たり前だ。水に沈む木なんだから。
施工初日は朝7時半から始めた。鎌倉山は住宅が密集しているから、機械の音と工具の振動には気を使う。近隣への挨拶は前日に済ませてある。
柿谷さんの庭は南側が開けているが、東側に2本の低木がある。根の張り出し方を考慮して、束柱の位置を少し調整した。こういう現場判断は、図面を引いた段階では分からないことが多い。現場を見て初めて決まる。
大引き(おおびき)を水平に渡し、根太を組む。ウリンの角材は重くて硬いから、一人では持ち上げるのも一苦労だ。二人がかりで位置を決め、水平器を当てて確認する。この基礎の精度が、デッキの完成度をほぼ決めてしまう。
床板を張る前に、一枚一枚に下穴を開ける。ウリン専用の超硬刃を使って、ビスが入る位置と皿取り加工を同時に行う専用工具だ。これを省くとビスが折れる。経験の浅い業者がウリンを扱うと、高確率でここで失敗する。
昼過ぎに柿谷さんが水とコーヒーを持ってきてくれた。「職人さんって、こんなに丁寧に穴を開けるんですね」と言っていた。そりゃそうだ。手を抜いたら後で問題になる。
初日で床板の3分の2まで張り終えた。
半年後の追記。柿谷さんから連絡が来た。
10月の下旬に、柿谷さんからメッセージが届いた。
「アクが最近落ち着いてきました。最初は雨のたびにドキドキしてたんですけど、今はほとんど出なくなりました。色も少し落ち着いてきた気がします。言っていた通りでした。」
施工から半年が経過していた。写真も送ってくれた。床板の色が少し落ち着いて、赤みが和らいでいた。これがウリンが安定期に入るサインだ。ここからゆっくりシルバーグレーへと変わっていく。
子供たちが裸足でよく遊んでいると書いてあった。それを読んで、この仕事は良いなと思った。
鎌倉職人のおさらい
柿谷さんの現場で改めて実感したのは、最初の素材選びが全てを決めるということだ。杉の防腐デッキが悪いわけじゃない。ただ、鎌倉山の湿気と影の多い条件に合っていなかっただけだ。どんな素材も、設置する環境と用途に合っているかどうかが、長く使えるかどうかを分ける。柿谷さんは今、あの杉デッキに使った費用とほぼ同じ追加投資でウリンデッキを手に入れ、次の20年を安心して過ごせる場所を持った。それが何よりの答えだと思っている。

100年後も愛される、
長く使うという贅沢。
私たちの家具が長く使えることを大切にするのは、ウリンという素材が持つ長い時間感覚に裏打ちされているからです。
使い捨ての消費文化から脱却し、世代を超えて受け継がれる価値を持つ家具。KamaKraftは、大自然の恩恵である「鉄の木」を、丁寧な工芸技術によってあなたの日常へと繋ぎます。