
鎌倉の路地裏に築く。
車が入らない狭小地でウリンを組む職人の手運びと設計の知恵
極小アプローチで発揮される手仕事の搬入技術と、湿潤環境に適応する精密クリアランス
狭所を生き抜くウリンの木肌解剖録
車が入らない狭い路地の奥は、風が通りにくく湿気がたまりやすい。そんな過酷な場所で何十年も形を保ち続けるため、ウリンの緻密な繊維がどう役立っているか、俺が削った感触から読み解いた記録だ。
年輪がぎゅっと詰まっており、狭い場所のじめじめした湿気が内部に染み込むのを防ぐ。
一本一本の繊維がまっすぐ通っているため、狭い壁際にギリギリで固定しても、木が暴れて壁を傷つける心配が極めて少ない。
丁寧にやすりをかけることで、狭い通路で通りかかる人が服や肌をこすっても、引っかからない滑らかさに仕上がる。
軽トラも入れない路地の奥に、静かに佇むウリンのアプローチ
鎌倉の古い住宅街や、山と山に挟まれた谷戸(谷あいの土地)。そこには軽自動車はおろか、一輪車を押して歩くのがやっとという細い路地がたくさん残っている。今回ご相談をいただいた川辺さんのおうちも、そんな情緒ある路地の奥に位置する。車が入れないということは、当然、クレーンなどの重機はもちろん、資材を運ぶトラックも近づけない。通常なら『工事が難しい』と断られてしまうような過酷な狭小地で、重くて頑丈な新品のウリンを担ぎ込み、古い生垣や隣の家の壁を一切傷つけることなくアプローチを完成させた。そこには、職人の意地とも言える手運びの連携と、風の通らない狭所だからこそ欠かせない湿気対策の知恵が詰まっている。今回はその現場の一部始終を、職人の目線からお届けする。
生垣を擦らず、壁に当てない。新品のウリンを担ぐ職人のチームワーク

ウリンは抜群の耐久性を持つ反面、非常に密度が高く、非常に重いという特徴がある。さらに今回は、一切傷のない新品のウリン材を使用しているため、運搬中のすれ傷や、ぶつけた時の欠けは許されない。
軽トラすら入れない道幅1.2メートルの曲がりくねった路地。両側には古いお屋敷の生垣や、崩れかけた大谷石の石垣、および隣の家のきれいな外壁が迫っている。ここに長さ3メートルを超える新品の重い板を運び込むのは、まるでパズルを解くようなものだ。
俺たちは声を掛け合い、前の人間が先の角を曲がるタイミングに合わせて、後ろが板の角度を絶妙にひねる。息が少しでも合わなければ、生垣の枝を折ったり、他人の壁に木をぶつけて傷をつけてしまう。
機械やクレーンは一切使えない。頼れるのは職人の足腰と、お互いの息の合わせ方だけだ。一歩ずつ、静かに、しかし確実に運び入れる。人の手で丁寧に運ぶからこそ、鎌倉の美しい街並みや周囲の暮らしを少しも損なうことなく、現場に無傷で資材を届けることができる。昔ながらの素材選びや、職人が現場にかける姿勢については 5年で限界を迎えた杉デッキ。柿谷さんが選んだ、やり直しのない素材 でも語った通り、施工前の段取りにこそすべてが現れるんだ。
- 細い路地でも息を合わせて曲がりきる、職人同士のあうんの呼吸での搬入。
- 大切なご近所の生垣や壁に絶対に触れない、ミリ単位のルート確認と手運び。
- 搬入中に木肌に傷をつけないための、一本ずつの丁寧な布養生と結束。

狭小の路地に溶け込む、異素材との調和設計
ただウッドデッキを敷くだけじゃない。鎌倉の古い路地裏にある『漆喰壁』『割栗石』『緑の葉』とウリンが重なり合ったとき、限られた空間が驚くほど広く、情緒豊かに見えてくる。その調和のツボを切り替えて見てくれ。
時の重なりを描く、白と銀灰の対比
古い白漆喰の壁に、経年変化で銀灰色に変わったウリンが寄り添う。新築には出せない、鎌倉の歴史と地続きの落ち着いた佇まいだ。
新築時の赤褐色も美しいが、数年経って落ち着いた銀灰色になってからが本番だ。古い漆喰の少し煤けた白と、ウリンの銀灰色のコントラストが、路地裏の光を柔らかく反射する。

風の通らない壁際に。カビと湿気を防ぐ『壁際5ミリ』の精密すき間設計

狭小地での施工手配でもうひとつ重要なのが、水はけと風の通り道の確保だ。家と家のすき間が狭い場所は、どうしても太陽の光が届きにくく、雨が降った後に湿気がいつまでも残る。
普通の木材なら、このようなじめじめした場所に置けば数年でカビが生え、腐敗が始まってしまう。ウリンは天然の防腐成分であるポリフェノールが詰まっているため腐る心配はないが、それでも床下に水が溜まり続ければ、建物の土台に悪影響を与える。
そこで俺たちは、建物とアプローチデッキの接続部に、正確に5ミリのすき間(クリアランス)を設けて固定した。このわずかなすき間が、雨水を床下に溜めずに素早く地中へ落とす水抜きとなり、狭いアプローチでも壁際の空気を淀ませない風の通り道となる。
ビスの頭を表面に出さないノンビス工法(隠し金具固定)により、狭い通路で足や服が引っかかる事故も物理的に防いでいる。見えない床下のこだわりや、異素材との調和を含めた設計については ウリンウッドデッキという意匠。リビングと庭を美しく繋ぐ設計作法 で詳しく解説しているが、限られた空間だからこそ、ミリ単位の余裕を持たせる設計が、のちの数十年を支える強さになるんだ。
- 壁際ギリギリまで寄せつつも、空気の流れを止めない5ミリの水はけクリアランス。
- ビス頭を一切露出させない、裏側からのノンビス工法による平滑で安全な歩行面。
- 湿気が滞留しやすいアプローチの床下に、空気を巡らせるための土台の通気スリット。

「車も重機も入れないあの細い路地の奥で、俺たちが一本ずつ肩に担いで運び、手仕事で組み上げたこのウリンのアプローチ。狭い場所だからこそ、水はけと風通しに徹底的にこだわり、何十年経っても歪まず、腐らず、家族の歩みを支え続けることをここに誓う。」
手運びによる無傷の施工
既存の生垣や石垣、大切な建物の壁を傷つけることなく、すべて人の手で丁寧に運び入れ、細心の注意を払って組み立てた。
壁際5ミリの湿気対策
建物や外壁との間に正確なすき間を設け、狭い場所でも空気の流れを止めない水はけ設計を施した。
街並みに馴染む銀灰の変化
年月とともに色が落ち着き、鎌倉の路地裏の風景の一部として溶け込んでいく美しさを約束する。
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100年後も愛される、
長く使うという贅沢。
私たちの家具が長く使えることを大切にするのは、ウリンという素材が持つ長い時間感覚に裏打ちされているからです。
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